CMディレクターが映画監督!? 映画ペタルダンス!

 CMディレクターとしても活躍する石川寛が、『好きだ、』からざっと7年ぶりに放つ劇映画監督作の第3弾。様々な苦衷や不幸を抱えながらも懸命に活きる女性たちが、小旅に出たのを機に吾れをしみじみ見つめ直し、新たな心緒で正面を向いていこうとするたたずまいを見つめます。『少年メリケンサック』の宮崎あおい、テレビドラマ「家政婦のミタ」の忽那汐里、『愛のむきだし』の安藤サクラ、『ゲゲゲの女房』の吹石一恵ら才能派が一堂に会しましました。彼女らの表象をリフレクションさせたかのような、精巧なヴィジュアルにも魅了させられます。そんなペタルダンスの魅力と、CMディレクターが監督した映画作品について、このページでは紹介していきます。

 

ペタルダンスのあらすじ

 大学からの友人のジンコ《宮崎あおい》と素子《安藤サクラ》。ある日、同じく大学時代の友人で、一人だけ地元で暮らしているミキ《吹石一恵》の妙なうわさを耳にします。それは、彼女自身が、自分から海に飛び込みおぼれたものの、助かったというものでした。ジンコらは休みを合わせて、うわさの真偽とミキのようすを確かめようと、彼女のいた町へと向かうことにしましました。ジンコが勤務先の図書館で鉢合わせた原木《忽那汐里》も運転手として加わって、一泊二日のスケジュールで車で旅をする三人でしたが……。

ペタルダンスキャスト

  • 宮崎あおい…ジンコ
  • 忽那汐里…原木
  • 安藤サクラ…素子
  • 風間俊介…川田
  • 後藤まりこ…先輩
  • 韓英恵…キョウコ
  • 安藤政信…直人
  • 吹石一恵…ミキ
  • 高橋努
  • 野村麻純
  • 成澤優子

スタッフ

  • 石川寛…監督
  • 石川寛…脚本
  • 菅野よう子…音楽

 これは確かに賛否両論だと思います。映画のシチュエーションに同感できる人のみが、楽しむことを許された映画だと思います。余白や沈黙があり過ぎ、アドリブやフリートークが多い作品ですが、それがまたこの映画のある種の特徴で、まるで薄色の筆でするりと描かれた水彩画のような雰囲気を醸し出しています。

 「ストロベリーショートケイクス」という邦画を以前観たんですが、それも女の子四人のストーリーで、別れ際、一人の女の子が別の女の子に「私、あんたのことずっと嫌いだった」と言うんです。そこで初めてお互いが心からの笑顔を見せるというシーンがあり、その時、女性の心理がよく描けているなぁ、と思いましたが、この映画も男性監督でありながら女性の心の機微を理解しているなぁと言う気がしましました。

 海原も、空も、庭つ鳥も、風も、斜めに曲がった高木も美しい。何処にも手を抜いていない丁寧な芝居でしましました。共感できれば満足、共鳴できなければ必要以上に丈長だけのつまらないフィルムです。清々しさが静かに残っていくインプレッシブワークです。俳優にドラマの中身の示唆だけを供え、後は自由に演じさせるという石川寛監督独自のスタイルによるシネマ『ぺタル ダンス』。

 同監督制作では、同じく宮崎あおいちゃんを登用した7年程前のムーヴィー『好きだ、』があり、華々しい力作として大成しているが、今回も彼女を登用し、さらに忽那汐里、安藤サクラ、吹石一恵の各女役者さんが加わって、自殺未遂を図った馴じみに三人で会いに行くというロードムービー力作となっています。その各人もそれぞれ悩みをかかえていて、仲間と再会するプロセスにおいて自らをめいめい解放していきます。

 『好きだ、』においてもそうだったように、この実作も天然の空気感が見事に取り込まれ、名優のごく未開拓な演技と呼応してぐんと心意に入って来るのです。  それにしても、この清々しさは何でしょう。空の広さ、でも青さではないです。ぼんやりと行き渡る空、そこに舞い躍るグライダー、かもめ。それらは風にのってゆったりと飛んでいる、その自由さでしょうか。雪が踊り、波が訪れ、そしてまた風が。そして四人も風にのせられて、遂には解放されていくのです。

 そして、あおいちゃん。何時ものように印象的場面をきちんと残します。風の形体をした樹木、その面様をなぞった彼女の斜めった見事なとっさの演技が美々しいです。かもめ等を指の間から捉えるという、そのちょっとの間に見て取る者を一点に落し掛けるその演技がいいです。何でもない場面ではありますが、その演技は通例のように見事に決まっていて、やはりここにも賢才の片影を見せています。

 大きな事件がある訳でもないこのような細工物は、通常にはそんなにトピックにはならないかも知れません。けれども、このような細工物こそ、もっともっと評価されて然るべきかと私は思います。

 いつまでも観ていたい感じがして、事実何度でもDVDで観ています。そして、北部が焦点の面影も非常に美しく、ミュージックも静かに寄りそい共に花花しい。 私はこの作品が好きです。それに日本の自然状態が活かされ、心魂の微妙さが表現された静かな作であり、ありさまはまったく別物ですが、どこか小津安二郎実作にも通じるものさえ私は感じましました。