「セブン」「ファイト・クラブ」デヴィッド・フィンチャー

 デヴィッド・フィンチャーというともはや知らない人などいない有名監督ですが、彼自身も元々はCMディレクターとして活躍していたのです。その独特の世界観や人を喰ったようなラストシーンの作品で注目を集めている彼ですが、デビュー作のエイリアン3は散々たる結果だったらしいですね。

略歴

1962年に『ライフ』誌の記者であった父親のこどもとして生まれ、カリフォルニア州マリン郡で育つ。左目の視力が弱く、オッドアイでもあり、両目の色が異なっています。

10代の時にオレゴン州に移り、現地の高校を卒業。18歳で8mmカメラを用いて映画製作を始めます。

1980年にILMのアニメーターとして働きはじめ、1984年まで所属しましました。

1986年、ビデオ製作会社「Propaganda Films」を設立。マドンナ、ジョージ・マイケル、エアロスミス、ローリング・ストーンズなどのミュージックビデオや、数多くのCMを手掛けましました。

1992年、『エイリアン3』で映画監督デビュー。初監督作品としては史上最高の製作費で作られたが、物語があまりにも暗く、興行的にも内容的にも失敗作とされましました。また出演者のシガニー・ウィーバーやマイケル・ビーンとのトラブルが絶えず、ウィーバーからは「アンタこそエイリアンよ!」と言われ、ビーンからは肖像権問題で危うく訴えられそうになり、前作以上の出演料を払うことになるなど、デビューは華々しいものではありませんでした。

1995年、『セブン』、『ファイト・クラブ』の成功により、フィンチャーは一躍ヒットメイカーとして注目されるようになりましました。

『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』、『ソーシャル・ネットワーク』ではアカデミー監督賞にノミネートされましました。

セブン
この映画はある意味ハッピー・エンドなのかも知れないです。 フリッツ・ラングの「ビッグ・ヒート」にも通じる部分がある「犠牲と心境の変化」。 フィンチャーは「ゾディアック」とか00年代の作品の方が好きだが、彼の最高傑作を1本選ぶならコレになるだろう。 市川崑と宮川一夫の「おとうと」の頃から銀残しという演出は使われてきた。 非常にコントラストの強い画面は、見る者に閉鎖的な息苦しさを与える。 この映画に描かれる下品さ、人間の汚れた部分を徹底的に見せる映像には嫌悪感を覚える者もいるだろう。 だが、人間の心理に向き合わせようとする物語……アンドリュー・ケヴィン・ウォーカーの哲学を絡めた見事なシナリオには唸らざる負えないです。 それに美しいシーンもある。 莫大な情報が眠る夜の図書館の静寂とかさ。 凶悪な犯罪や殺人が耐えない現代社会。 サマセットはそんな世の中に嫌気が差していた。定年を迎え辞めようという時に起きた「七つの大罪」になぞらえた連続殺人。
奴は何故殺人を繰り返すのか、それが徐々に浮き彫りになっていく。 殺人犯の説教なんてクソ喰らえです。 大量かつ複雑な情報をコンパクトにまとめてしまうフィンチャーは正に職人です。 サマセットとミルズは早く平和な家に帰りたがっていたが、殺人を止めるため、「安心して子供を産める世の中」にするために犯人と戦う覚悟を決めます。 サマセットは、ミルズの妻とそのお腹の中にいる新しい命に触れる事で「人を信じてみたい」と希望を持ちはじめます。 最後の戦いの前にフル装備で身を固めていくシーンのワクワク感は何なのだろうか。 それを絶望の淵に叩き落すのだから油断できないです。 結末は残酷なようにも思えるが、ミルズの表情に“憤怒”は無く、かといって“哀しみ”にも染まっていなかったです。 勝ち負けではないです。 「もうこれ以上犠牲者を出さないためにも…このクソ野郎は俺がブチ殺す」という冷静な戦士の表情です。 車の中で贖罪を求めていた筈の彼が、警官として責務を負う覚悟を決めたのです。例えどんな絶望が待っていようとも。 フィンチャーが“アレ”を見せなかったのも俺は気になります。
実は犯行にはおよんでいなくて、警官に嫉妬する自分と憤怒にかられた刑事を“精神的”に殺そうとしただけだった可能性もあるのではないだろうか。 俺はそういう結末があっても良いと思うんです。七つの大罪から描かれる暗く深い描写に残酷なラスト。サスペンス映画としては完璧。ケビンスペイシー、ブラピ、モーガンの名演技が光る。フィンチャー好きになった思いれの深い映画。
パニックルーム
 OPから凝ったタイトル・キャストロールで魅せます。越したばかりの家に強盗が押し入る、という王道かつ、ありきたりな物語に「パニック・ルーム」と呼ばれる避難室を軸に据えて、CGと多彩なカメラ運びを駆使し、次から次へと起こる母子と強盗との駆け引きを気を逸らせる事無く見せる展開運びが秀逸。特にひねりがある訳でもなく、この上なくストレートでシンプルなプロットを2時間弱の間、ほぼ変わらない舞台と限られた登場人物だけで作り上げた密室劇。見せる術を使い切ったかの様な監督の挑戦の様な映画です。監視カメラ上で強盗の姿を確認し、ボールが転がる映像と跳ねる音がシンクロして現実である事を知った時の恐怖と緊張感。母子が強盗から逃げ回る4階建ての屋敷内を階段、エレベーターを使い立体的・俯瞰で捉えるカメラ運び。メグが携帯を取りに部屋を出る時のスローモーションと無音の凄まじい緊迫感。兎に角演出に小技が効いていて単調になりがちなこのシンプルサスペンスを如何に退屈させずに見せるかという努力が伺えます。
ジョディ・フォスターは表情と感情表現が豊かで文句無い説得力で惹き付けます。流石です。フォレスト・ウィテカーは気の弱さ、人の良さが上手く表現されていて感情移入してしまい、ラストは逃げ切って欲しかったなぁ、としみじみ感じてしまいましました。 「トワイライト」シリーズでその名を一気に知らしめたクリステン・スチュワートはまだあどけない可愛らしさと、その違和感のない自然な演技に目を奪われましたね。セントラルパークでの母子のラストカットは2人が体験した悪夢から解放された安心感と、ハッピーエンドの余韻が印象深く残る美しいラストシーンでした。
ファイト・クラブ
 この頃のデビッド・フィンチャーの世界観には痺れますね。提示されるもの全てに酔いしれてしまいそうです。とはいっても、初見時はよく理解できない作品でありましました。なんじゃこりゃ、と思ったのです。何度も見なおしているうちに、男性性を得ようとするばかりに暴走した男の悲劇であることが理解できてきて、ようやく作品を楽しむことができるようになりましました。 男は金と女だ!という核心を突きまくった言葉がありますが、ノートンちゃんは死の女神たるマーラに惚れ、職を捨てるどころかこの世から金という概念そのものを消し去ろうとしましました。消費社会、資本主義なんて一人の女を愛するためなら捨てたっていい!という潜在意識がタイラーとなり、具現化したと考えています。女が金を殺したのです。ある意味純愛です。これほど深い愛のストーリーはないですね。 映画の捉え方は人それぞれだから、こういう考えもあっていいんじゃないかと思って書きましました。それにしても、主役の3人はコレでもかというくらいに輝いてますね。特にブラピ。史上最高のブラッド・ピットでしょう。
ドラゴン・タトゥーの女
 一見、性格や考え方も合わなさそうな、ミカエルとリスベット。 そんな彼らがmacbook pro片手に、難事件を解決しようと捜査するのが現代的でかっこいい。 真犯人が分かってから死亡するまでの時間が短くてあっけないのが残念。 ミカエルへの攻撃の手をもっと残虐で冷酷なものにすればもっと盛り上がったと感じる。 最後のリスベット「らしくない」恋の感情が芽生えた点は、賛否両論あるが、個人的には彼女なりの一つの内面的な成長だと捉えた。

監督作品

映画

  • エイリアン3 Alien3 《1992年》
  • セブン Seven 《1995年》
  • ゲーム The Game 《1997年》
  • ファイト・クラブ Fight Club 《1999年》
  • パニック・ルーム Panic Room 《2002年》
  • ゾディアック Zodiac 《2007年》
  • ベンジャミン・バトン 数奇な人生 The Curious Case of Benjamin Button 《2008年》
  • ソーシャル・ネットワーク The Social Network 《2010年》
  • ドラゴン・タトゥーの女 The Girl with the Dragon Tattoo 《2011年》
  • ゴーン・ガール Gone Girl 《2014年》

TVシリーズ

  • ハウス・オブ・カード 野望の階段 House of Cards 《2013年~》製作総指揮作品を務めたTVドラマ。シーズン1の第1・2ストーリーでは監督も兼任。

ミュージック・ビデオ

  • マドンナ《「エクスプレス・ユアセルフ」、「ヴォーグ」、「オー・ファーザー」、「バッド・ガール」など》
  • ビリー・アイドル《「Cradle of Love」》
  • ジョディ・ワトリー
  • リック・スプリングフィールド
  • スティーヴ・ウィンウッド
  • ジョージ・マイケル
  • マイケル・ジャクソン
  • エアロスミス
  • ポーラ・アブドゥル
  • ローリング・ストーンズ《「Love Is Strong」など》
  • ナイン・インチ・ネイルズ《「Only」》
  • THE WALLFLOWERS
  • アウトフィールド
  • A Perfect Circle《「Judith」》

入賞・ノミネート

  • アカデミー賞 2008年 監督賞 『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』 ノミネート
  • 2010年 『ソーシャル・ネットワーク』 ノミネート
  • 英国アカデミー賞 2008年 監督賞 『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』 ノミネート
  • 2010年 『ソーシャル・ネットワーク』 入賞
  • ゴールデングローブ賞 2008年 監督賞 『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』 ノミネート
  • 2010年 『ソーシャル・ネットワーク』 入賞
  • 放送映画批評家協会賞 2008年 監督賞 『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』 ノミネート
  • 2010年 『ソーシャル・ネットワーク』 入賞
  • ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞 2008年 監督賞 『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』 入賞
  • 2010年 『ソーシャル・ネットワーク』 入賞
  • サターン賞 1992年 監督賞 『エイリアン3』 ノミネート
  • 1995年 『セブン』 ノミネート
  • 2008年 『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』 ノミネート
  • 全米映画批評家協会賞 2010年 監督賞 『ソーシャル・ネットワーク』 入賞
  • ニューヨーク映画批評家協会賞 2010年 監督賞 『ソーシャル・ネットワーク』 入賞
  • ロサンゼルス映画批評家協会賞 2010年 監督賞 『ソーシャル・ネットワーク』 入賞
  • バンクーバー映画批評家協会賞 2008年 監督賞 『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』 入賞